相続時精算課税制度のメリット・デメリットをわかりやすく解説|相続税・贈与税の計算と申告方法
皆さん、こんにちは。
大分の「イデア総研税理士法人」代表税理士の南です。当事務所では「大分相続相談室」を運営し、相続に関する多くのご相談を承っています。
「生前贈与を考えているけれど、税金が高そうで心配」
「新しい制度ができたと聞いたけど、何が変わったの?」
最近、事務所の無料相談会でも、このようなご質問をいただくことが増えてきました。
相続対策において、生前贈与は非常に有効な手段です。
その中でも、大きな財産を一度に贈与しやすい「相続時精算課税制度」をご存知でしょうか?
名前が少し難しそうですが、仕組みを正しく理解すれば、将来の相続税負担を抑えられる可能性がある制度です。
今回は、この制度の仕組みから、最新の改正ポイント、メリット・デメリット、そして具体的な手続きまで、専門用語をできるだけ噛み砕いて解説します。
1. 相続時精算課税制度とは?仕組み・対象者・最新改正のポイント
まず、「相続時精算課税制度」とはどのようなものか、その基本をお話ししましょう。
Q. どんな人に向いている制度ですか?
A. 将来値上がりが見込まれる財産を早期に移転したい方や、相続税がかからない見込みのご家庭(基礎控除内の方)に向いています。
一言で言えば、「贈与するときは税金を安く(あるいはゼロに)しておき、その分、贈与した人が亡くなったとき(相続時)にまとめて計算し直し、税金を精算する」という制度です。
まさに名前の通りの仕組みですね。
通常、贈与税は年間110万円を超えると高い税率がかかります(これを「暦年課税」といいます)。しかし、この制度を選ぶと、最大2,500万円までの贈与については、特別控除により贈与税の負担が生じません。
2,500万円を超えた部分にだけ一律20%の税金がかかります。そして、将来相続が発生した際に、その贈与した財産を相続財産に足し戻して正しい税額を計算し、すでに払った贈与税があればそれを差し引く(精算する)、という流れになります。
原則として、以下の関係である必要があります。
- 贈与する人(贈与者): 60歳以上の父母または祖父母
- もらう人(受贈者): 18歳以上の子または孫(推定相続人等)
※住宅取得資金の贈与など、特例で年齢制限が緩和される場合もあります。
令和6年(2024年)からの大改正
ここが非常に重要です。これまでこの制度は「一度選ぶと少額の贈与でも申告が必要」という手間がネックでした。
しかし、令和6年1月1日以降の贈与から、「年間110万円の基礎控除」が新設されました。
つまり、この制度を選んでも、年間110万円までなら贈与税の申告も不要で、将来の相続財産への持ち戻し(加算)も不要になったのです。
これにより、使い勝手が劇的に向上しました。
2. メリット:早期贈与や評価固定の効果—活用に向くケースを解説
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか? 大分の土地や資産をお持ちの方の事例も交えながら解説します。
① 多額の財産を早期に移転できる(贈与税負担の軽減)
最大のメリットは、2,500万円という大きな特別控除枠です。
例えば、「子供が家を建てる資金を援助したい」「孫の教育資金をまとめて渡したい」といった場合、通常の暦年課税では高額な贈与税がかかりますが、この制度なら税負担なくスムーズに資金移動が可能です。
お子様が現役世代のうちに資産を譲ることで、経済的なゆとりを提供できるのは、親心としても嬉しいポイントですよね。
② 将来値上がりする財産の税金を抑えられる
この制度で贈与した財産は、相続時に「贈与した時の価額」で計算されます。
例えば、現在価値が2,000万円の株式や、開発が進んで地価が上がりそうな大分市や別府市の土地を贈与したとします。
将来、相続時にその価値が5,000万円に値上がりしていても、相続税の計算上は「2,000万円」として扱われます。
つまり、値上がり益部分について、将来の相続税の課税対象から外す効果が期待できます。
将来大きく値上がりしそうな財産がある場合には、非常に有効な節税対策となります。
③ 収益物件の贈与で相続財産を増やさない
アパートや駐車場などの収益物件を贈与すると、その後の家賃収入は「もらった子供のもの」になります。親が持ち続けていたら、家賃収入が貯まり、親の現金(相続財産)が増え続けてしまいますが、贈与することでその増加を防ぎ、将来の相続税負担を抑える効果が期待できます。
3. デメリット:相続税への影響/一度選択すると戻れないリスクと注意点
「良いことづくくめ」に見えるかもしれませんが、専門家として必ずお伝えしなければならないデメリットとリスクがあります。
ここを理解せずに飛びつくのは危険です。
① 原則として「暦年課税」に戻れない
これが最大のリスクです。一度「相続時精算課税制度」を選択する届出書を出すと、その贈与者(親など)からの贈与に関しては、二度と「暦年課税(通常の年間110万円控除)」に戻すことはできません。
(※ただし、前述の通り令和6年の改正で、精算課税制度の中にも110万円の控除枠ができたため、このデメリットは以前より緩和されています。)
② 財産価値が下がると損をする
メリットでお話しした「評価額の固定」は、逆のパターンではデメリットになります。
贈与時に2,000万円だった土地が、相続時に値下がりして1,000万円になっていたとしても、相続税は「2,000万円」の価値として計算されます。
大分県内でも、エリアによっては地価が下落傾向にある場所もあります。
そのような不動産をこの制度で贈与してしまうと、結果的に高い税金を払うことになりかねません。
③ 「小規模宅地等の特例」が使えなくなる可能性
居住用の宅地などを相続する場合、土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」という非常に強力な制度があります。
しかし、この特例は原則として「相続」で取得した土地に適用されるもので、生前贈与した土地には適用できません。
「土地を贈与してしまって特例が使えず、相続税が数百万円増えてしまった」という失敗例は後を絶ちません。不動産の贈与は特に慎重な判断が必要です。
4. 相続税・贈与税の計算と申告方法:必要書類と手続きの流れ
実際にこの制度を利用する場合の手続きについて解説します。「難しそう」と思われるかもしれませんが、流れを押さえれば大丈夫です。
税額の計算方法
【贈与税額 =(贈与財産の価額 - 2,500万円)× 20%】
※贈与財産が2,500万円以下の場合は、贈与税は0円です。
※令和6年以降は、年間110万円の基礎控除が設けられています。
基礎控除分は相続時の持ち戻しが不要ですが、特別控除(2,500万円)とは別で管理されるため、実際の計算は個別の状況により異なります。
手続きのタイミング
贈与を受けた年の翌年、2月1日から3月15日までの間に、税務署へ申告と書類の提出を行う必要があります。
必要な書類
初めてこの制度を利用する際には、以下の書類が必要です。
1. 贈与税の申告書(第1表、第2表、第11表など): 税務署や国税庁HPで入手可能です。
2. 相続時精算課税選択届出書: 「この制度を使います」という宣言書です。これが最も重要です。
3. 受贈者(もらう人)の戸籍謄本または抄本: 氏名、生年月日、贈与者との関係を証明するためです。
4. 贈与者(あげる人)の住民票の写しなど: 氏名、生年月日を証明するもの(戸籍の附票などでも可)。
5. マイナンバーカードなどの本人確認書類
手続きの流れ
1. 贈与の実行: 贈与契約書を作成し、銀行振込などで証拠を残して財産を移転します。
2. 資料収集: 戸籍などの必要書類を市役所で取得します。
3. 申告書作成: 上記の計算式に基づいて申告書を作成します。
4. 提出・納税: 所轄の税務署へ提出し、税金が発生する場合は納付します。
一度この届出書を提出すると、翌年以降、同じ贈与者からの贈与はすべてこの制度が適用されます。
届出を忘れると通常の高い税率(暦年課税)がかかってしまうこともあるので、初回の申告は特に注意が必要です。
5. 迷ったらこう選ぶ:暦年課税との比較チェックリストと専門家への相談目安
「結局、うちはどっちを選べばいいの?」と迷われている方へ。判断のヒントとなるチェックリストをご用意しました。
比較チェックリスト
以下の項目に多く当てはまる場合は、相続時精算課税制度の検討価値が高いと言えます。
□まとまった資金(数百万~数千万円)を今すぐ子供や孫に渡したい理由がある。
□贈与したい財産(株や土地)は、将来値上がりが確実視される。
□アパートなどの収益物件を持っており、家賃収入を子供に移転させたい。
□相続税がかかるほどの財産総額ではない(相続税の基礎控除以下である)。
※解説:相続税がかからない家庭であれば、この制度を使って2,500万円まで無税で贈与しても、将来の相続税もゼロなので、単に「贈与税なしで財産を移せる」というメリットだけを享受できます。
□贈与のたびに契約書を作ったり管理するのが面倒だ(令和6年以降の新制度活用)。
逆に「暦年課税(通常の贈与)」のままが良いケース
□長い年月をかけて、コツコツと多くの人に財産を移転したい。
□将来値下がりする可能性のある不動産を贈与したい。
□「小規模宅地等の特例」を使いたい自宅の土地がある。
専門家への相談目安
この制度は「税金の先送り」が基本であり、トータルの税金が安くなるかどうかは、
「将来の相続財産額」と「将来の税制」をシミュレーションしないと分かりません。
特に不動産が絡む場合や、相続人が複数いて「争続(あらそうぞく)」が心配な場合は、自己判断せずに必ず専門家に相談してください。
6. まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は「相続時精算課税制度」について解説しました。
令和6年の改正により、年110万円の基礎控除が加わったことで、この制度は以前よりも「使いやすく、リスクの少ない制度」へと進化しました。
しかし、一度選択すると戻れない点や、不動産の評価に関する落とし穴など、注意すべき点は依然として存在します。
大切なのは、「制度ありき」で考えるのではなく、「家族にどう財産を残したいか」「家族の幸せな未来は何か」という想いを出発点にすることです。その想いを実現するための手段として、どの制度が最適かを一緒に考えましょう。
相続や贈与は、一生に何度もあることではありません。だからこそ、不安になるのは当然です。
私たち「イデア総研税理士法人」は、ここ大分で、皆様のそんな不安に寄り添い、最適な解決策をご提案することを使命としています。
「うちの場合はどうなるの?」「ちょっと計算してみてほしい」
そんな些細な疑問でも構いません。まずは一度、お気軽にご相談ください。皆様の家族の絆を守るお手伝いができることを、心より願っております。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、具体的な税務判断については必ず専門家へご相談ください。
【監修・執筆】
南 徳行(みなみ のりゆき)
イデア総研税理士法人 代表税理士
大分県を中心に、相続税申告、生前対策、事業承継など、資産税務に特化したコンサルティングを行う。
「お客様の想いを大切にする相続」をモットーに、親身なサポートを提供している。







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